※このお話は100%フィクションです。
どうか「うさん村」の旅を楽しんで!
ここに、国から認められていない集落があった。
小さな島に築かれた村の名前は「うさん村」
この村にタツオ学院という寺子屋を作った者がいた。
ここでは嘘つき学という学問を教えている。
この世の中が嘘で回っている事実を認め、正しく嘘と向き合うことにより、悪意のある嘘に騙し騙される事がないようにという教えである。
ユカノ・モプコ:「あっ、ども。ユカノ・モプコっす」
いつもタツオ:「やぁはじめまして。吾輩がタツオ学院の学院長、いつもタツオである。君が新しく入った新入生かな?」
ユカノ・モプコ:「へぇ。そのようで、アタシャ田舎から出てきたばっかで何が何だか良くわからんすよ。たまたま表の看板を見て入って来ちまったんだが、嘘つき養成講座ってなんでぇ?」
いつもタツオ:「うむ。吾輩が優しく丁寧に教えてやろう。そうだな。まず、単に嘘を悪と決めつけないで嘘と正面から向き合うこと。世の中が嘘の力で回っている事実を確認すること。嘘にも種類がある事なんかを研究する場所として吾輩が開設したのである」
ユカノ・モプコ:「アタシャ嘘が苦手で、振り返えっと損ばっかしだぁ。ちっと興味が沸いたんで受けてみっかな」
いつもタツオ:「みんな!おはよう。今日は新しい仲間が入った」
ユカノ・モプコ:「ユカノ・モプコっす。よろしくお願げぇします」
ウマミ・スー:「モプコちゃん。よろしくね!」
いつもタツオ:「じゃあ始めるぞー」
いつもタツオ:「今日は噓つき養成講座の記念すべき第一回目の授業である。諸君!起立!礼!!!」
イチモツ・コタロー「なんだ噓つき養成講座って?オレそんなのに入った覚えないよ」
ウマミ・スー「アイツ飽きっぽいから、また新しいこと始めたようね。ダマされて入ってきたモプコちゃんが可哀想だから、さっきは話にのって上げたけどホントくそ野郎よね」
シメノ・ダイフク「プッ!いつものパターンでしょ、またすぐに飽きるって。現実世界で恐妻の尻に敷かれてるからって、ここで僕らに威張ってるんだ。あの甲斐性なし!」
イチモツ・コタロー「シッ!聞こえると何かと面倒だぞ。アイツが記事を投稿しない限り、またオレ達この世から消えちゃうぞ」
いつもタツオ:「もう授業が始まっているのに騒がしいぞ。私語は厳禁!破った奴は…。廊下に立っとれ!」(あぁ言ってみたかった♡)
「では皆んな黒板をみなさい」
ウマミ・スー:「先生。これ何ですか?」
いつもタツオ:「これは嘘を体系化させたタツオ学院オリジナルの図である。まず、嘘には種類がある事に触れていきたい」
1、自分につく嘘で害のあるもの
2、他人につく嘘で害のあるもの
3、自分につく嘘で利のあるもの
4、他人につく嘘で利のあるもの
ユカノ・モプコ:「図の真ん中よりちょっと上に書いてある冗談ってのはどういう意味になんだぁ」
いつもタツオ:「モプコ君。良い質問だ。かなり軽度で利のある嘘は冗談というカテゴリーに入ると吾輩は思っておるのだ。この冗談というやつは、場を和ませたり人を笑わせたりするのである」
イチモツ・コタロー「オレは曲がった事は許せん!冗談だと?何事も誤摩化そうとする奴など切り捨て御免だ!」
いつもタツオ:「そう、この冗談というやつも人を選ぶことが重要だよ。コタローの様に融通の聞かないバカ正直なタイプには、効かないどころか事態を悪化させるので気をつけよう」
ユカノ・モプコ:「ほぅ。アタシャ冗談なんて言えんので参考にすんべ」
いつもタツオ:「オッホン、話を戻すよ。他人につく嘘で害のあるものは最悪だ。巡り巡って必ずそのしっぺ返しは、自分に返ってくると思った方がいい。まぁ批難の標的になるし、長い目で見るとそんな嘘は得策とは言えないな」
ウマミ・スー:「自分につく害のある嘘がストレスになるって言うのは何となく分かるんだけど、自分につく利のある嘘ってのは何?」
いつもタツオ:「ここに自己暗示って書いたけど、自分に暗示を掛けている様なものかな。極端に言って、俺はできる俺はできる俺はできる…みたいなね。まぁポジティブシンキングなんて言葉があるけど、これも場合によっては自分自身に利のある嘘をついてモチベーションを維持や向上させたりしている様なもんだよ」
シメノ・ダイフク:「グゥー💤グゥー💤」
いつもタツオ:「こらっ!!ダイフク!目を開けたまま寝るなー!」
シメノ・ダイフク:「あっ!起きてます起きてます!鼻炎で鼻が詰まってて、イビキの様な音が出ちゃうんです」
いつもタツオ:「ハァ。もっとマシな嘘をつかんか。お前の嘘は害のある嘘だ。吾輩が嘘についてエモーショナルに訴えかけているのに、教室の空気がゆるんでしまったぞ。廊下に立っとれ!」
イチモツ・コタロー:「先生。他人に利のある嘘ってなんだよ?そもそも嘘に利なんてあるものか。そんな考えを持ってる卑怯な奴らは叩き切ってやる」
いつもタツオ:「堅物コタローめ。世の中は、建て前といってな。相手に配慮する為に嘘をつく事が多々有るのだ。一番多いのは知っているのに知らない振りをすることかな。これも嘘と言ったら嘘になる」
シメノ・ダイフク:「廊下からこんにちは。これは良くわかります。言わぬが仏とか言わぬが花とかって、ことわざもあるくらいだし僕も良く使う嘘です」
ウマミ・スー:「確かに、嘘も方便ってのは納得ね。そうやって互いに配慮しあって物事を円滑に進めて行くことって重要よね」
イチモツ・コタロー:「うぬぅ…。俺は侍として認めん!俺は曲がった事が大嫌いだ」
ユカノ・モプコ:「うっはぁ。なんだか先生がとてもステキに見えてきたべぇ♡」
いつもタツオ:「モプコちゃん。君の様に吾輩の値打ちに気が付く子は、この学院には見当たらなかった…。出会ったばかりだけど、これは君からの求愛行動だと先生は認識した。もう嘘だとは言わせない♡チューッ」
ナメック・ジロー「タツオ先生。軽率な行動は止めといた方が身の為ですよ」
いつもタツオ:「なんだジローいたのか。君は存在感なさ過ぎるんだよ」
ナメック・ジロー:「いやぁだって、さっきからいらっしゃってますよ。先生の奥様」
いつもタツオ:「ん?何言ってるのか意味がわからない」
※ゆっくりとスクロールしていってね。
いつもタツオ:「ギャッ!!」
恐妻・デスボイス:「随分と楽しそうじゃな〜い♡」
いつもタツオ:「ヒャメテー!!!」
いつもタツオ:「お願いだから命だけは!」
恐妻・デスボイス:「袈裟切りかぁ…千切りかぁ…細切りかぁ…みじん切りもいいわねぇ♡」
いつもタツオ:「たーすけてー!!!」
ナメック・ジロー:「奥様!今日は近所のスーパーで豚肉の特売がありますよ。早くしないと無くなっちゃう!!」
恐妻・デスボイス:「うっそぉ♡早く現実世界に戻らなくっちゃ!!」
いつもタツオ:「ジロー!助かったぞ。良くそんな事を覚えてたなー!」
ナメック・ジロー:「フフッ。何をおっしゃいますか。デタラメに決まっているでしょう。ついさっき偉そうに他人に利のある嘘を語っていたくせに、嘘も方便ですよ。奥様が何に執着するのか、忘れたんですか?」
いつもタツオ:「あの状況下で冷静に嘘を考えられる君が、ある意味で恐ろしいよ…..」
いつもタツオ:「よし、気を取り直して次はフィールドワークをしよう。そうだな、この寺子屋から一番近い施設が警察署だから、留置場見学に行こうと思う」
イチモツ・コタロー:「はっ留置場見学?普通は博物館とか工場見学だろ!大体そんなこと可能なのか?」
シメノ・ダイフク:「留置場をみてどうするんだろ?お菓子工場の見学がしたいです!」
いつもタツオ:「欲を張るでない、ポッチャリ王子。どこに行っても学べる事はあるぞ。それとコタロー、この村は村全体での教育に力を入れている。見学の申し出は快よく引き受けてくれるさ」
ユカノ・モプコ:「アタシャなんだか怖い気もすっがぁ、なぜだか早く見にいきてぇ」
ナメック・ジロー:「クッ。これは面白くなりそうだ…」
いつもタツオ:「やぁどうもどうも、先ほど見学の電話予約をしたタツオ学院です。今日は宜しくお願いします」
案内役:「これはこれはタツオ学院の皆様、お待ちしておりました。特に見所は無いのですが、何かお役に立てればと思います。今日はたまたま詐欺まがいの連中が多いですね」
それぞれに掛かった容疑は以下の通り
容疑者①振り込め詐欺の常習犯(お年寄り数名から金銭を騙し取った。男は出し子)
容疑者②地面師(建設会社などから土地所有者を名乗り金銭を騙し取った)
容疑者③結婚詐欺(複数の女性から数年に渡って多額の金品を騙し取った)
いつもタツオ:「先程の授業を思い出してくれ。他人に害のある嘘で、酷い場合になってくると、この様な場所に行き着くのだ」
※下記は1時間目の嘘を体系化させた図より
ウマミ・スー:「この人達って皆んな嘘をついたってことなんでしょ?同じ嘘でも、方便と言われる嘘と大違いね」
ナメック・ジロー:「なるほど、ここで長時間の取り調べを受ける訳か。冤罪の可能性を含めて慎重に行わなければならないな」
シメノ・ダイフク:「容疑者①に関しては、自分が何をしたのか分かってなそうだな」
イチモツ・コタロー:「①のアイツは利用された捨て駒に過ぎないな、大本を取っ捕まえて叩き切ってやる。でなければ、また人を換えて遣り口を換えて繰り返すだろうよ」
ウマミ・スー:「私は③の男が気になったわ。どうしてあんなヒョロ男に女性達は騙されちゃったのかしら?」
いつもタツオ:「懐に入り込むのが巧いのだろうな。いつの間にか女性達も自分がいなければこの人は生きては行けないだろうと…」
ウマミ・スー:「サイッテーの男ね!馬鹿にしてるわ!」
いつもタツオ:「さぁて長居は無用じゃ、皆んな少しは勉強になったかな?良い嘘と悪い嘘、今日は悪い嘘の行きつく先を見せたかったんだ。係りの方、どうもありがとうございました」
案内係:「いえいえ、お易い御用ですよ。また何かありましたら仰って下さい」
ユカノ・モプコ:「なんだかぁ色々と考えさせられちゃったなー。アタシャ嘘は苦手だが、悪意をもった人にダマされん様にせにゃならんべぇ」
いつもタツオ:「その通り。悪い意味でダマしたりダマされたりしない為に嘘と正面から向き合う必要があるんだよ。嘘は悪として直ぐに蓋をしちゃうと、いっこうに中身を理解できないからね」
シメノ・ダイフク:「それにしても嘘を考えつく人って頭が良い気がするな。②の地面師なんて、人の信用も得ていたんだろうから馬鹿じゃできないよ」
いつもタツオ:「う〜む。結果論からすれば、あの3人が冤罪でなければ馬鹿ということだろうな。嘘をつくマインドセットが私利私欲の為に人をダマして犠牲にすること前提だ。小手先の頭の回転で一時は人をダマせても、必ず捕まる運命とでも言っておこう」
ナメック・ジロー「嘘をつくなら互いにプラス、少なくともどちらかに損失を被ることの無いように行わなければならないですね」
いつもタツオ:「さすがはジロー、良くわかっているね。その場に関わる人全てにとってベストとまで行かなくてもベターな嘘。つまり僕らはここで、善良なる噓つきになる為、日々研究を重ねるのだよ」
イチモツ・コタロー:「それらしい事を言っているが、やっぱりオレは納得が行かない。嘘に嘘を重ねて地に足が付かなくなるぞ」
いつもタツオ:「コタローの言っている事は最もだ。不用意に嘘をつけと言っている訳では無いのだよ。もちろん正直であることが一番強い。ただ、それだけでは割り切れない事が日々起こっている事も事実だ。選択を迫られた時にバカ正直になるのか、嘘をついて物事を円滑に進めるのか。正解は無いがどちらが現実主義で合理的であるのかは明確だと思う」
-つづく-