※隠とん小屋
ナメック・ジロー:「ふぅ、ようやく隠とん小屋にたどり着いたか。アカシさんはいるだろうか…」
コンコンッ
ナメック・ジロー「失礼します、いつもタツオ先生の教え子でナメック・ジローと申します」
声:「山!」
ナメック・ジロー:「?(この場合は大抵こう答えるな)川!」
ガチャッ
すぐにスワル:「ん?あぁこの間の小童か。なぜ合言葉を知っておるのだ…。まぁ良い、なんか用か?」
ナメック・ジロー:「メザメノ・アカシさんにお会いしたいのですが」
すぐにスワル:「アカシは潜入捜査でバナナ社に忍び込んでおる。もう帰ってくる頃だと思うがのぅ、お主いったいどうしたんじゃ?」
ナメック・ジロー:「じつは我々タツオ学院の生徒の一部がタツオ先生に対して謀反を起こし、村の目安箱に訴状を投函しました…。その結果、タツオ先生は村民会議に掛けられて、学院は一時閉院、タツオ先生は留置場に入れられてしまったのです」
すぐにスワル:「タツオめ、いつかは痛い目をみると思ってはいたが…。村民会議で決まったのなら覆すのは難しいじゃろう」
ナメック・ジロー:「はい。しかし、先日タツオ先生との面会で、先生が留置場内のある男から、タナカ村長の黒い噂を耳にしまして。証拠を集めて村長に圧を掛け、保釈を狙おうと考えたのです」
ギーッバタン
メザメノ・アカシ:「ひょっとして隠者討伐令(いんじゃ とうばつれい)の話じゃないかな」
ナメック・ジロー:「あ、アカシさん!」
メザメノ・アカシ:「スワル法師様、ただ今戻りました。ジロー君といったね、話は聞かせてもらった。タツオ先生の件、出来るだけ協力するよ」
ナメック・ジロー:「ありがとうございます。隠者討伐令に関しては、タナカ村長が隠者の森奥地に美女を住まわせている建物の発覚を恐れて、周辺に住む思想家を一掃しようと発令したと聞いておりますが…」
メザメノ・アカシ:「うん。私も情報を収集してきたんだけれだ、どうもその様だ。ただ、裏で手を引いているのは村長秘書のシタ・タカの可能性が高いと僕はみている」
ナメック・ジロー:「シタ・タカさん、ですか?あの方は人が良くて有名で、村の人々からの信頼も厚い筈ですが…」
メザメノ・アカシ:「それは表向きの顔だな、シタ・タカは承認欲求と支配欲の塊の様な男だ。少年時代に うさん村の暗算大会で僕に敗れてから彼のプライドは酷く傷ついたらしく、それからは私の事を目の敵にしているんだ。恐らく人工知能『で〜ぶランニング』内にバグ因子を侵入させることが出来る人物なんて彼以外に考えられない」
コンコンッ
すぐにスワル:「山!」
声:「川!」
すぐにスワル:「入れ」
男:「ふぅ!疲れた」
ナメック・ジロー:「まずい!役人だ!」
メザメノ・アカシ:「安心して、彼は仲間だ。僕がシタ・タカの動向を探るために役所に放ったスパイさ」
密偵の男:「シタ・タカについて御報告します。先程、シタ・タカが人工知能で〜ぶランニングに潜り込ませたバグ因子、夜黒龍が役所に出没しました。シタ・タカが呼び出した様で、人気のない屋上で密会していたところ、タツオ学院の元生徒ら3人と遭遇した模様。シタ・タカは即座に罪をでっち上げ、3人を留置場に拘留してしまいました!」
ナメック・ジロー:「!!」
メザメノ・アカシ:「遂にシタ・タカが本性を現したか…。それで、夜黒龍はどうした?」
密偵の男:「はい。シタ・タカの命令で人工知能『で〜ぶランニング』の中に戻った様です。恐らくは、さらに強大な力を蓄えて次の機会を待つということでしょう。あっそれと、村長が隠者の森奥地に公費で不当に建てた屋敷、通称『おしりんハウス』の証拠文書を入手しました。念のために複製を渡しておきますね。どうぞ」
メザメノ・アカシ:「おしりんハウスか…ありがとう、しばし休息をしたら、再びに任務に当たってくれ」
密偵の男:「承知しました」
ナメック・ジロー:「学院の3人とは恐らくはコタロー、スー、ダイフクだろう。ただでさえ困難な状況であるが、この3人も救い出さなければならないか…」
すぐにスワル:「まずいのぅ。タツオの保釈だけならばタナカ村長を脅せば何とかなったかもしれんが…。シタ・タカが絡んでいる3人を助け出すことは不可能じゃ。それに今は隠者討伐令によりワシも他の隠者達から村長との交渉役として担ぎ上げられていて余裕がないのじゃ」
メザメノ・アカシ:「隠者討伐令に関しては、相手が行政軍。一度決定した事項は簡単には覆りません。待っていても狩られるだけです。こっちから打って出た方が得策であると私は考えます」
ナメック・ジロー:「挟み撃ちにするのはどうですか?タナカ村長が公費を使って不当な屋敷を建て、美女を住まわせて私服を肥やしている証拠をもっと集めます。そして村の人々に事実を知らせてから怒りをあおる。デモ隊を組織して村役場に一斉に押しかけるという手筈です」
メザメノ・アカシ:「なるほど、面白い」
メザメノ・アカシ:「隠者を集め、うさん警察署を島の北東から叩く。恐らく、隠者討伐令を指揮するのは、この島最強の男といわれる上杉雲双でしょう。ここで何とか時間を稼いでいる間に、村民のデモ隊をうさん大橋から村役場へ向けて進撃させ、挟み撃ちに。警備が手薄になっている筈だから、シタ・タカを捕らえられるかもしれない!」
すぐにスワル:「じゃが、そう上手く行くかのぅ。公費の不正利用の証拠だけで、村民がデモ隊を組織するに至るかが謎じゃ」
メザメノ・アカシ:「そうだ!先程、バナナ社に潜入していた時に良いものを手に入れた。カケヨ社長の旦那でマルコス・ボーロという男がいるのですが、操作中に地下室前で見つかってしまい、苦し紛れに交換条件を出したのです」
ナメック・ジロー「交換条件ですか?」
メザメノ・アカシ:「うん。彼は大乱行ふんどしブラザーズというゲームでプロゲーマーを目指している。僕はちょっとした裏技を教えてあげたんだ。そしたら、マルコスは見逃すどころか、どうしても御礼がしたいと西洋から持ってきた高性能のカメラをくれたんだ。これを使えば決定的な記録が残せる!」
すぐにスワル:「よし!直ぐに準備にかかろう。二人は、タナカ村長のおしりんハウスの証拠を集めて村に知らせ、ワシは隠者を組織して行政軍と真っ向勝負じゃ!」
ドンドンッ!
すぐにスワル:「山!」
声:「川!」
ガチャッ
隠者達:「スワル!まずい行政の討伐軍が動き出したぞ!」
すぐにスワル:「迷っている暇は無い様じゃな!では諸君、健闘を祈る。よし、片っ端からこの森に住む隠者に声を掛けよ!時こそ来たれ!!」
メザメノ・アカシ:「ジロー君、我々も急ごう!」
ナメック・ジロー:「はい、参りましょう。タツオ学院の皆んなの無事を祈る…」
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-ナレーション-
とうとう動き出した行政の隠者討伐軍。絶体絶命のピンチにジローの計略は成功するのか?もはや、うさん村全体を大きく揺るがしかねない事態に発展した今回の騒動。そして黒幕シタ・タカを捕らえることは出来るのか。
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※隠者の森 北東部
森の案内役(隠者):「もう少しで建物が見えてきますよ。あっ、ここです」
※おしりんハウス
森の案内役:「通称おしりんハウスと呼ばれるタナカ村長の別邸です。流石にこの奥地までは誰も近づきません。我々もつい先日発見したばかりです」
メザメノ・アカシ:「ありがとう。しかし、よくも抜け抜けとこんな屋敷を作れたものだ…。よし、写真を撮っておこう」
パシャッ
ナメック・ジロー:「村の公費を不正に使った割には、随分と派手な建物だな」
森の案内役:「シッ!誰か屋敷から出てきます」
女:「シリゾウ様、次はいつ頃にいらっしゃるんですか?」
タナカ・シリゾウ:「そうだな…。さっき話した隠者どもを討伐した後でゆっくり滞在する予定じゃ。いいか、お主ら ほころび組はむさ苦しい隠者どもを一掃するまで、くれぐれも建物の外に出てはならんぞ」
女:「はい…。」
タナカ・シリゾウ:「おしりんハウスは、重量鉄骨で厳重な作りになっておる。隠者どもが落ち延びてきても扉さえ開けなければ中には入れん。いいか、隠者の討伐が終わるまでは訪問者が来ても扉を開けてはならんぞ」
女:「…。」
タナカ・シリゾウ:「では、さらばじゃ!」
パシャッ
メザメノ・アカシ:「決定的な瞬間をカメラで抑えた。ほころび組だと?村長は行くところまで行ってしまった様だな。後は村の皆んなが上手く作戦に乗ってくれれば良いが…」
ナメック・ジロー:「急ぎましょう!時間がありません。全力で戻って村民を説得しなければ、討伐軍に隠者達は壊滅させられてしまうでしょう」
メザメノ・アカシ:「よし、急ごう!引き続き案内を頼む」
森の案内役:「わかりました!付いてきて下さい」
※一方、隠者の森 北西
上杉 雲双:「では、これから隠者討伐を開始する!全員配置につけぇ!極力、犠牲者を出したく無い。皆の者、私の指示に従って森に侵攻してくれ!」
うさん警察署員:「はっ!!」
上杉 雲双:「よし!先鋒隊、進めぇ!!」
ザッザッザッザッ
すぐにスワル:「討伐軍め、ようやく森に侵攻を始めたか。よし、身軽な者は木に登って準備しろ!前線は草をまとって時を待て!数では劣るものの、ワシらのゲリラ戦法を見せつけてやれ!!」
討伐軍 第1先鋒隊:「あ〜あ、相手が隠者では弱い者いじめになってしまうな。どうせ逃げ回るだけなんだから、我らに犠牲者なんて出るもんか、上杉様も大げさだよ」
ガサッ
討伐軍 第1先鋒隊:「ん?」
隠とん兵:「!!」
討伐軍 第1先鋒隊:「いた!隠者だぞ!捕らえろ!進め!」
ズブッ!
ドッシーン!!
討伐軍 第1先鋒隊:「お、落とし穴!お前ら来ちゃダメだ!!」
ドッシーン!!
隠とん兵:「よし、上から小便かけてやれ!」
討伐軍 第1先鋒隊:「やめろぉー!ギャー!!」
上杉 雲双:「ん!?先鋒隊が騒がしいぞ、何かあったのか!」
すぐにスワル:「諸行無常…こっちじゃ」
べベン♪
討伐軍 第2先鋒隊:「プッ、飛んで火に入る夏の虫とはこのことよ!皆で奴を囲んで袋叩きだ!追え!」
バキッ
討伐軍 第2先鋒隊:「痛てぇ!石が降ってきやがった!木の上だ!引け引け!」
隠とん兵:「ハッハッハ!挟み撃ちだ!」
討伐軍 第2先鋒隊:「何?いつの間に!しまった、挟み込まれた!」
ボカスカペチンッ!
討伐軍 第2先鋒隊:「ギャー!」
バタッ
上杉 雲双:「先鋒隊は何を手こずっておるのだ!」
討伐軍 連絡係:「伝令!第1先鋒隊、第2先鋒隊が共に壊滅しました!単独行動を好むはずの隠者が連動して動き、抵抗しています!恐らく、すぐにスワルが指揮をとっている様です」
上杉 雲双:「すぐにスワルめ!隠者の組織化に成功したのか…。恐るべき奴め!どうやらワシを本気にさせたようじゃな。よし!これより我ら討伐軍本隊による進軍を開始する!1列目は盾を持て、2列目は長槍を構えろ!飛んでくる石を盾で防ぎながら長槍で仕留める!全体進め!!」
ザッザッザッザ
隠とん兵:「やべっ!鉄壁の守りだ、これじゃ石投げても意味ないわ」
ブスッ
隠とん兵:「ギャー!!盾の隙間から槍で突いてくるぞ!逃げろ!」
すぐにスワル:「上杉め、ちょっとは頭も使う様じゃな。う〜む、止む終えん。作戦Bに移行する!皆、討伐軍をうさん川ギリギリ付近まで誘い込むんじゃ!」
上杉 雲双:「いいか!緑の衣をまとった白ヒゲがいたら真っ先に仕留めろ!奴は知将だ、狩り取れば褒美を与えるぞ!!」
討伐軍 本隊:「よっしゃ!最高の小遣い稼ぎだ!攻めろ攻めろ!」
※隠者の森 うさん川 付近
隠とん兵:「く、くるなー!勘弁してくれ!」
討伐軍 本隊:「ようやく追い詰めたぞ!もう手加減はしない!おとなしくお縄に付け!」
すぐにスワル:「今じゃ散れ!伏兵たちよ!姿を現せ、背後から川に突き落とすんじゃ!」
隠とん兵 伏兵隊:「よし!今だ背後から川に突き落とせ!」
討伐軍 本隊:「何っ!!!な、流される!」
すぐにスワル:「者共!岸に上がらせるな!投石用意!!投げろー!」
討伐軍 本隊:「ギャー!!!」
討伐軍 連絡係:「伝令!本隊が敵の罠にはまり兵士の半分ほどを失いました!」
上杉 雲双:「チッ 役立たずどもが!スワルめ我ら討伐軍をコケにしおって!ワシ自ら出る幕ではないと思っていたのじゃが…ぐぉぉぉおおおお!!!!!」
討伐軍 連絡係:「まずい!上杉様が無双モードに突入してしまう。理性を失い、周囲のものを片っ端から切り倒すぞ!皆んな目を合わせるな!逃げろ!!」
上杉 雲双:
「ぐがぁぁぁ!」
隠とん兵:「やばい!上杉が来たぞー!!」
すぐにスワル:「うろたえるな!奴とは決して戦ってはならん!真っ向勝負で生き残った者はいない、目を見るな!速やかに下がれ!!」
上杉 雲双:「ぐがぁぁぁ!!」
スパッ
隠とん兵:「ありゃ?」
上杉 雲双:「ぐがぁぁぁ!!」
スパッ
隠とん兵:「おろっ?」
隠とん兵:「ひえぇ!大木ごと切り倒した!!怖いよー!」
上杉 雲双:「ゴラァ!ゴロズゾォォ!!」
バサッ
隠とん兵:「あーれー!!」
討伐軍:「今だ!上杉様に注意しながら隠者達をやっつけろ!」
すぐにスワル:「やはり勝ち目は無かったか…しかし時間は稼げた。アカシ、後の事は頼んだぞ…」
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-ナレーション-
スワルの率いるゲリラ隠とん兵達の奮闘により、一時は討伐軍に勝利するかと思われたのだが…。やはり上杉雲双の圧倒的な武力を前に窮地に追い込まれてしまった。果たしてジローとアカシはデモを誘発し、この機に乗じて役場からシタ・タカを捕らえることができるのであろうか。
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-つづく-